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屋台裏ノート

OZMAFIA!! 感想・考察なぐり書き

「Words are Worth」キリエ内省録【中編】スウェーデン語翻訳

 

キリエさんの意地悪(`・н・´)=3
前回、今回の記事はすべてこのチラ見せツイートから始まりました。

続・キリソン

相変わらず正解はわかりませんが、それなりに答えを追ってみた記録。中編はスウェーデン語からの翻訳についてくわしく。スウェーデン語とか初めてだけど英語にできればわかるはず!

簡単な感想と歌詞をなぞって読む前編*1とちょっと深読みした後編*2もどうぞ。

>> 以下、OZMAFIA!! PC版、vita版とキャラソンのネタバレを含みます
なお歌詞カードからの引用は『』内にて、考察感想を目的とした記事です。

 

スウェーデン語部分の翻訳

スウェーデン語(SV)になっている3箇所をgoogle翻訳で英語に直訳(EN)→フレーズを検索して原文にあたりました。以下引用文中の太字は歌詞に出てくる部分に該当。

訳した結果ワーズワースがふたり出てきた時の「これだーっ!」感は半端なかったのですが、嬉しいながらも、キリエさんの本音に近いものを見てしまう後ろめたさや「本当にこれか?」とどこか拭えない疑念と、複雑なものでした。

歌詞7段目

英訳(SV→EN)

  • 『Bakom molen skiner solen ännu.

     Vissa dagar måste vara mörka och dystra.』

  ↓

  • "Behind mole sun shines yet. Some days must be dark and dreary."
もとの詩

 

 "The day is cold, and dark, and dreary;
 It rains, and the wind is never weary;
 The vine still clings to the mouldering wall,
 But at every gust the dead leaves fall,
 And the day is dark and dreary.

 My life is cold, and dark, and dreary;
 It rains, and the wind is never weary;
 My thoughts still cling to the mouldering Past,
 But the hopes of youth fall thick in the blast,
 And the days are dark and dreary.

 Be still, sad heart! and cease repining;
 Behind the clouds is the sun still shining;
 Thy fate is the common fate of all,
 Into each life some rain must fall,
 Some days must be dark and dreary."

  

  The Rainy Day 

  Henry Wordsworth Longfellow (1842)

 

ヘンリー・ワーズワース・ロングフェロー (1807-1882, アメリカ)

ひとり目のワーズワース。雨は一人だけに降りそそぐわけではない、の原文。いくつか検索すると、年代的に大学教授をしながら後の婦人と交際していた頃の作品なのかな?

この詩のタイトル"The Rainy Day"と、雨音が止まないキリソン。キリエさんも雨の日にはこの詩が浮かんだりするのでしょうか。

詩の内容は表題通りにじめじめとした日々が綴られ、過去や若さへの執着で鬱々としているところから、誰にだってそういう日はあるさと顔を上げ、最後の一文からはそうじゃない日だってあるじゃないかとまで言いそうな希望が伺えます。キリソン全体の構造、あるいは退屈な日々からキリソンに歌われる夜に至るまでのキリエさんの考えも、この詩の流れに倣っているように見えます。

キリエさんはこの詩のなかでも終わりの方に出てくる希望を切り取って歌っているので、
「雨は降る、だが雲の向こうには太陽がある」
と訳しました。歌の中盤に現れるこれは、キリエさん自身の内側とドロシーとの思い出に浸りきってぐだぐだ言う前半の歌詞からすると意外なほど前向きな言葉に聞こえます。

歌詞9段目

英訳(SV→EN)

  • 『Spegel, spegel på väggen där.

     Säg vem som dåraktigaste i landet är?』

  ↓

  • "Mirror, mirror on the wall. Say foolish thing in the country?"
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」のようですが、スウェーデン語だと
  • "Spegel, spegel på väggen där. Säg, vem som skönast i landet är?"

になるはず。歌詞と違う部分の"dåraktigaste"を英訳すると"most fool" なので、歌詞を訳しなおすと
「鏡よ鏡、世界で一番愚かなのは誰?」

出たーグリム童話!白雪姫!オズマフィアの考察でわかりやすい童話ネタに当たるとテンション上がる。それ以外にもつながりはあるのでしょうか。

白雪姫では悪い魔女のセリフですが、キリエさんは悪役としてというより、その世界でひとり異質で思い出を手放すことができないひねくれ者を自ら皮肉っているのではと思います。

フーカさんのことを愚かだと言っておきながら、自分自身やカラミア達を含めた自分たちのこをまでも「愚か者」と言うキリエさん。その言葉によって、ドロシーの聡明さや自分を含めた人間の業や、すべてをわかった上で何もできずに居る自分自身を見つめるキリエさんの温度を感じます。

歌詞11段目

英訳(SV→EN)

  • 『Fast ingenting kan återge oss

     timmen av storslangenhet i gräset,

     av blommans salighet, sörjer vi inte.

     Vi finner styrka i det som finns kvar.』

  ↓

  • ”Though nothing can restore us  the hour of the great long drive in the grass, by flower bliss, we mourn not. We find strength in what remains.”

もとの詩

 

 ”Though nothing can bring back the hour
 Of splendour in the grass, of glory in the flower;
 We will grieve not, rather find
 Strength in what remains behind;

 

  Ode: Intimations of Immortality Chapter X, Lines 10-13

  William Wordsworth (1804) 

 

ウィリアム・ワーズワース (1770-1850, イギリス)

ふたり目のワーズワース。フォロワーさんから彼の妹の名前がドロシーだと聞いた時は震えました。

 

 ”草原の輝き 、花の栄光
 再びそれは還(かえ)らずともなげくなかれ
 奥に秘められたる力を見いだすべし”

(高瀬鎮夫・訳)

 

なんて美しい和訳なんだ……。 映画「草原の輝き」(1961)翻訳より。この映画の舞台がカンザスでまた震えました。ドロシーの故郷。

こちらも先の詩と同様、悲しみに暮れるだけでなく前を見て進みなさいと取れる内容。前者は「前を向け」という姿勢から、こっちは「その手に"力"を持て」と、より一歩踏み込んだ強い教示が読み取れます。

旅の果ての回想の終わりに謳われた"The Rainy Day"から、キリエさんがもう一度現実を見つめなおし過去に浸ることをやめた後の"The Splendour in the Grass"。雨の一晩を越えて彼は何を力として目を覚ますのか。

アウトロににじむような歌声は力の抜けたつぶやきのようで、思い出という夢から覚めゆるやかな眠気にただよう意識の中でキリエさんがこの言葉を思い浮かべていることに、フーカさんと出会って変わっていくキリエさんを感じられる気がします。

 

ここまでの感想

「Words are Worth」全体は軽やかなリズムに後ろ向きな歌詞が乗っていますが、スウェーデン語のところを訳してみると対照的なほどポジティブな言葉が隠されています。

キリエさんがわざわざ外国語で引用したふたつの詩。それが本音に近いから外国語に隠した可能性もあれば、普段口にする悪口雑言とはかけ離れた言葉を口にすることへの照れくささもあるのではと想像できます。かわいい。

それに加えて、常にキリエの背を押してくれたドロシーの存在が詩人たちの言葉に重なるのかもしれないなーとなんとなく思いました。

こんなにスウェーデン語と向き合ったことなかった……キリエさんむずかしいです。

 

中編はここまで、次で終わり。

*1:

*2:

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