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屋台裏ノート

OZMAFIA!! 感想・考察なぐり書き

「Words are Worth」キリエ内省録【後編】ちょっと深読み

続々・キリソン

簡単な感想と軽く歌詞を読む前編*1、問題のスウェーデン語部分を翻訳してみる中編*2からの続き。最後は歌詞を読んでいて浮かんだことついて深読みします。キーワードは【言葉】と【鏡】。

>> 以下、OZMAFIA!! PC版、vita版とキャラソンのネタバレを含みます
なお歌詞カードからの引用は『』内にて、考察感想を目的とした記事です。

 

【言葉】とキリエ

 タイトルに隠れた言葉

曲のタイトル「Words are Worth」は、スウェーデン語部分に隠された詩二編の作者、"The Rainy Day"のヘンリー・ワーズワース・ロングフェローと"The Splendour in the Grass"のウィリアム・ワーズワースにかかっている。

が、本題はさらに"Worth"の後に【言葉】が隠されているのではというところ。worthは目的語をとるため、"Words are worth 〜"(言葉は〜に値する)の形を意図的にぼかしているのでは、という可能性。

【言葉】とはキリエさんと誰かをつなぐもの。歌詞全体を通していろんな形で【言葉】が現れ、周囲とのコミュニケーションが垣間見えます。

『巧言令色』、フーカと『偽りの言葉』、ドロシーの『名前』も何度となく呼んだのでしょうし、脳を得てから伝えたくなった『届かない言葉』も山ほどあるでしょう。それぞれの【言葉】がキリエさんにとって何らかの大きな価値、意味がある。また、現在の彼と過去の彼をつなぐ記憶、ひとつひとつの鮮明な記憶とその再生を促すあらゆる【言葉】は、与えられた財産であり時として憎くもあるでしょう。

それぞれの言葉に対する思いを表現するなら、

Words are worth remembering
Words are worth something
Words are worth nothing
Words are worth loving

こうなりそう。そしてきりがないほどあふれそう。

ぶつ切りになったタイトルこそキリエさん得意の本心隠しでしょうが、そこに隠された【言葉】は彼にとってどれも真なんじゃないかと思います。だからこそ隠してるんでしょうが。好きに想像してご覧なさいとでも言われそうな、この辺りの追いかけっこはキリエさんならでは。

その優秀な脳のおかげで、豊かな語彙を自由自在に操るキリエさん。人や自分自身や過去や未来、さまざまな対象と向き合って出てくる言葉が彼にとってどういうものなのか、それによってキリエさん自身がどう感じてきたのか、そういう想像を掻き立てるようなキリエさんらしいタイトル。

ドロシーへの言葉

もうひとつ気になるのはドロシーへの【言葉】。

歌詞の中でも長い回想を含めて、キリエさんがドロシーに対して能動的に【言葉】を発する表現はありません。『こんにちは』と言われても返事はなし、『名前』も覚えているだけ。

そのガラス越しのような息苦しさは、回想から目覚めた後の『届かない言葉』のフレーズによって一気に時間と空間の隔離を実感させます。何度も思い返しては彼女に言い足りなかったこと、今こそ伝えたいことをずっと溜め込んできたのでしょう。

『紅い蝋』が手紙に封をする蝋なら、そうやって増幅した『叶わない願い』もまた誰かに向けられた【言葉】であり、手紙のようなもの。その宛先は彼自身なのかドロシーなのか、封をしたところで彼の脳は忘れることのない思いをいつか誰かに見せることはあるのか、そして彼は果たしてそれを期待しているのか。

そう思うと、vita版アフターエピソードでフーカに対して語られたものは、やっと大切な人に打ち明けられたこの手紙の一端なのかもしれません。

言葉にならない願い

この曲ではキリエさんの祈りも願いも常にふんわりとしていて、なかなか具体的な【言葉】にはされません。その、婉曲的にさらっと流されるところに、本編の流星群祭りでも願い事を言葉にしないキリエさんが重なります。

決して言葉にはならなくとも、胸の内では確かに何かを願い続けていることもこの歌ではっきりわかる。そこにいじらしさと、その願いの重さも感じられます。

同時に、本来は言葉数の多いキリエさんがあえてそうしないことで、ここまで歌われてきた存在の大きさと、今日も朝に向かって時は進むというどうしようもない事実の中に漂うキリエさんの存在に改めてため息が出ます。

 

【鏡】とキリエ

発売前に撒かれたヒントがスウェーデン語→訳してみたら白雪姫→CDの歌詞ブックレットを開くとタイトルが反射して鏡文字になってる!

これが【鏡】に何か意味があるのかと思ったきっかけでした。

鏡よ鏡

 

 ”鏡よ鏡、世界で一番愚かなのは誰?”

 星宙に訊ねても 月は嘲笑うだけ

 

歌の中でキリエさんは外国語で詩を引用し、同じように外国語で「鏡よ鏡」と問いかけています。

【鏡】に訊いたところで、返ってくる答えもその答えの主までも彼はわかっているはずなので、あの文言自体はきっと自問。彼が向かった【鏡】は自分の中の【鏡】、その向こうで嘲笑っているのは彼自身。何もかもひとりで抱えるしかない状況でもがく自分をわらっているのかもしれません。

雨降りの夜には星も月も見えないはずですが、歌詞の経過を振り返ると、前段で引用した「雨の向こうに太陽がある、止まない雨はない」の通りに雨は止んだのかもしれません。その時見上げた星宙は窓の外に見えたものなのか、自問する心の中なのか、どちらともとれるように思います。

鏡そのもの

「鏡よ鏡」と訊ねる『星宙』は彼にとってどんな【鏡】なのでしょうか。

オズマフィアの世界で星といえば「願いを託す」ものですが、歌の中のキリエさんはただ言葉を投げただけ。『叶わない願い』という表現を使うキリエさんはすでに星に願うことを諦めているよう。彼と【鏡】である『星宙』は、他の住人たちとそれとは違った関係にあるのでしょう。

オズの世界で起きているすべてのこと見ているはずの空、そこにすべての記憶が消えない自分を重ねているのか。記憶を保持する観測者として、人々の営みをよそにただ変わらない空を拠り所にしているのかもしれません。彼自身も飛ぶことで空の一部にもなれますし、カカシとして見上げていた空でもあると思うと、キリエさんの心は空に近いような気がします。

対になるもの

歌詞の中には、【鏡】を挟んで向かい合う実像と虚像のように対になるものがいくつかあります。

  • ふたりのワーズワース
  • 現在のキリエと過去のキリエ
  • 言葉でけむにまくキリエと内に抱えた本当のキリエ
  • 愚かで汚れたキリエと愚かながら純真なフーカ
  • 思い出の中のドロシーと現実に現れたフーカ

『空想と現実 偶然と必然の先』、キリエさんが見ている現在は、それまで生きてきた過去とは少し違う世界。【鏡】という境界を挟んだ似て非なる世界に見えているのかもしれません。脳を得たことでもうひとりの自分の視線を持ってしまったとか、能力上唯一対等に話ができるのは鏡越しの彼自身ではないのか、という画も浮かびます。

鏡を通して向かい合った自分がいつかのドロシーを追いかけているのが見え、そこから離れることで現実のフーカを見つめることができる。歌詞全体の流れからそんな想像もしてしまいます。

キリエさんと【鏡】といえば、本編で鏡越しにフーカと会話するシーンがいくつかあります。試すような言葉と視線、しかし鏡の向こうのキリエさんには、フーカとふたりきりという空間の中でどこまで本心を出そうか、どこまで思ってくれているだろうかという揺らぎもあるような気がしてきます。

キリエさんの内と外、ゆらめきの境界に【鏡】が横たわっているのかもしれません。

 

いろいろ考えてみての感想

その昔、「虹の彼方に夢がなう場所がある」と映画のドロシーは歌いました。

星に祈れば願いが叶う夢の場所。

星が願いを聞いてくれることなんて無い、虹すら見えないと、OZMAFIA!! のキリエが歌うのはドロシーとは真逆の世界。

それでも彼は希望の詩を口ずさみ、雨の降る中「雲の向こうには太陽がある」と綴ります。

それは『いつか消えてしまう』と彼自身が否定した夢や情をもう一度信じるだけの力となって、夜を超え彼を生かす。

この歌の果てにキリエが得たもの、大事にしまった思い出を手に、夜が明けた世界は彼がより実感を持って生きていける現在になっているといいなあと願わずにいられません。

もちろん、フーカと一緒に。

 

 

OZMAFIA!! Character Song Vol.4 KYRIE 「Words are Worth」

キャラソン巡り1 おわり

 

余談

キリソンは曲調と内容と相まってキャラソンシリーズでは一番お気に入りです。特にカウントダウンからの指ぱっちんがとんでもなくかっこよくて胃がきゅーっとする。何よりキリエさんの流れるような罵倒が大好きなので、それがそのまま歌になったことに大変興奮します。あと、「鬼さんこちら」といえば目隠し鬼ですが、乗り換えルートで手袋目隠しされるフーカさんのスチルが無いのは思い返すにつけもったいない!

ブログを作って初めての記事、ツイッターとは違い文字数が限定されていなところでのびのびと書くことができました。いくらでも深読みできるキリエさんを相手に、いまさら自由に書きすぎた気がしています。仕方ない。

 

おしまい ( 'ω')ノシ

*1:

*2:

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